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「しかも、連続ひったくり犯だから、また被害者に死傷者が出るかもしれない。早く解決しないと、マスコミがかぎつけるって、上から課長に圧力かけられているんだよ。家では妻、署では部長から突き上げられて、シーサー課長も気の毒だなっ」 「シーサーじゃなくて、比嘉(ひが)課長でしょ」 「ヒーガー!」 「全然違うじゃないですか。いくら課長の笑顔がシーサーに似ているからって……」 「オレがヒロ、お前がウルフ。課長がシーサー。お互いをあだ名で呼び合う古き良き習慣を、捜査一課にも導入しよう」 「いいですけど……、ヒロ先輩、課長本人にシーサー課長! って言えるんですか?」  コンコン、コンコン。 「ヒロ先輩、困るとタバコの箱叩く癖、直した方がいいですよ。禁煙したのに、思い出して吸いたくなりませんか?」 「俺じゃないぞ」 「え? でも、コンコン、って」  コンコン、コンコン。 「あれ? 先輩、タバコの箱、持っていませんね? じゃあ、何の音……」  ウルフ刑事がヒロ刑事の手元から視線を上げると、ヒロ先輩の後ろの窓ガラスの向こう側に、黒くて丸い、ふわふわしたものが浮かんでいた。 「きゃあっ! 出たっ! 幽霊だ……」ウルフ刑事の喉の奥から悲鳴がもれた。
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