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 そもそも張り込みしていた理由は、連続バイクひったくり事件の証拠が固まらなかったせいだ。 防犯カメラの映像から、犯人の目星はついたものの、犯人は用心深かった。フルフェイスのヘルメットのせいで顔は見えず、犯行に使ったバイクも、住んでいるアパートには置いていなかった。どこか別の場所に停めているのだ。 だから犯人が家から出てきて、バイク置き場に行くのを待ち構えていたのだった。  バイクで出かけて、ひったくりをすれば現行犯で逮捕、ひったくりをしなくても、バイクが特定できれば、バイクにひったくりの痕跡が残されていないか調べたり、防犯カメラに映っている映像と比較したりできる。そして被害者にもバイクを確認してもらう、という手筈だったのだ。  犯人を確保してしまっては、署に連行する理由がない限り、逃げられて証拠隠滅されてしまうかもしれない。 「ヒロ先輩、どうしましょう……?」  ウルフ刑事は犯人を取り押さえたまま、助けを求めるようにヒロ刑事を見た。  ツンツン。 「ヒロ先輩、僕の革ジャンを引っ張るのはやめて、手伝ってくださいよぉ」
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