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ウルフ刑事は、いつもはスーツなのだが、張り込みをしているときにスーツ姿は違和感がある。
それで今日は私服を着ているのだが、注文してあった革のライダースジャケットが昨夜、やっと届いたので嬉しくて、つい着てきてしまったのだ。犯人が暴れたりして、もみ合うことになれば、汚してしまうかもしれないと思うと、落ち着かない。
「俺は引っ張ってないぞ」
ツンツン。
「ほらあ! やっぱりツンツンしているじゃないですか……」と、引っ張られているライダースジャケットのすそをみると、小さくてふっくらとした手が見えた。
反対側の腕には、表紙にタコの絵が描いてあるスケッチブックを小脇に挟んでいる。
細くてさらさらした髪は、耳の下でツインテールに結ばれ、斜めがけしているポシェットには、もふもふのヒョウ柄のピンクのファーが付いている。
「タバちゃん!」
以前、遊園地で殺人事件があった時に出会った少女だった。車の窓から覗き込んでいた時は、目から上しか見えなかったので、気が付かなかったのだ。
「ハイでし」舌足らずな話し方も相変わらずで、「です」とまだうまく言えないようだ。
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