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「こんなことをして許されると思うな?一族の者が黙って見逃しはしない」
久賀が、唇を破るほどに噛んで吐き捨てた。
「へえ、そうか。いつでもどうぞ」
登は、自信があるのか、危機感がないだけなのか、のほほんと答えた。
先ほどとは別人のように見える。
「そんなことより覚悟はしておけ。俺たちみたいなこの世の理をねじ曲げる者は、地獄みたいななまぬるい所には行けないぞ。罪を償うのを許されることも、誰かが助け上げてくれることもない。ただ何もない闇を彷徨うだけだ。この世でも、あの世でもな」
登はそう呟くと何事もなかったように立ち去り、残された久賀はその場に崩れ落ち、いつまでも心を手放したままだった。
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