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 夫の口から奥野という、私が普段から目障りであれこれとひとりで怒りをくすぶらている女、奥野真知子の名前が出てきたので目を丸くする。 「奥野がどうしたこうしたって、学童のお迎えから夕飯から、寝るときまでずうっと、君は玲香に話していたそうだね。おかあさんが怖いって、ずっと怯えてる。あまり言いたくはないけれど、今の自分を鏡で見てごらんよ。とてもじゃないが、僕の好きだった君の顔とは思えない。自分で確かめてから、もういちど相談しにきてくれないか?」  じゃ、僕は風呂に入るからと夫はスマホをソファーに置きっ放しにして、バスルームへ行ってしまった。 「鏡って……なによ」  私は騙されるように、ソファ脇にあるサイドボードの上に立てかけた、玲香の髪を結ぶときに使う卓上スタンドミラーを手に取る。  鏡にうつる自分に、うっと、息が止まった。
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