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 おかあさん、わらって。  娘の玲香が私の顔を見るたびに、そう言うようになった。  どうして、おかあさんいつも笑っているでしょう。テレビをみたり、玲香とお話しているとき、いつもおかしいわねって笑っているじゃない。  なにか気になるの?と訊こうとして顔を近づけると「おこらないで!」と玲香は逃げる。  そのたびに、理由をきけずじまいになってしまったので、思い切って夫に相談することにした。  玲香を風呂にいれ、寝かしつけたあと、ソファーでスマホをいじくっている夫に「相談なんだけど」と切り出してみた。  夫が、眉間にしわをよせて「なに?」と、顔をあげる。  ゲームでもしていたのだろうか、うまくいっているときに話しかけたからイライラしているのかしら。だとしたら申し訳ないなという思いをこめて「ごめんね、夢中になっているときに」と切り出すと、夫はこう言った。 「君の真似だよ」と。 「私の真似って……そんな顔していないわ」 「ああ、自分じゃ気が付かないだろうけどね。君はいつも怒ってる。玲香や俺に対してじゃなく会社の、えーと誰だったかな、奥野さんか」
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