ゴンゾウの父

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「邪魔が入ったんですか?」 「そうなんだよ。役場の連中が、お偉いさんにこっぴどく叱られたらしくてさ。突然、ウチの親父に商売を辞めろだなんて言い出したんだよ」  この地が埋蔵金の番組収録地であることが全国的に知れ渡るようになると、一攫千金を夢見た者までもが訪れるようになり、この店で購入した道具を使って、山のあちこちを勝手に掘り始めたのだそうだ。被害を受けた地元民が役場に駆け込んだ結果、職員総出で、山を勝手に掘りかえす連中を制止して回ることになったのだという。 「スコップを売ったりすれば、そうなりますよね」  連中の多くが手にしていた道具類に地名のシールが貼られていたことで、ゴンゾウの父親の仕業だと役所の上層部にまで知られることになった。その流れで、ゴンゾウの父親に便宜を図っていた職員達は、上司から大目玉を食らったのだそうだ。  勲龍の卸しについても、購入の手間が増えただけでなく手数料まで上乗せされるようになったので、ゴンゾウの父親が始めた卸売業は、周辺の飲食店の評判が良くなかったらしい。そのうちの誰かが、店を畳ませようと役所に働きかけたに違いないとゴンゾウは話した。 「だけど、採掘道具の販売はまだしも、蕎麦屋や酒の卸業まで辞めろというのはあんまりですね」 「そうだろ?」 「正式な認可を受けて商売してたんですよね?」 「いや、商売を始めて1年以上経ってたけど、免許も持ってなかったし認可も下りてなかった」
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