3rdチャレンジ

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3rdチャレンジ

 なんて有様だ。どうやら前回の作者は網の描写に労力を費やし、執筆に飽きて煙草を吸いにいってしまった。普段は現代ドラマしか書かないくせに、無理に異界の物を描写するからだ。しかも、飽きて適当な文で話を締めるのであれば、せめて「魂を捕えた」とか「仕事を終えた」とかで終わらせてほしい。  さて、今日も仕事を――と言いたいところだが、なぜか俺は洋室で椅子に腰掛けている。もちろん洋室というのは人間界の部屋だ。俺たちが住む天界には真っ白な直方体がランダムに配置されているだけで、個人用の部屋なんてものは存在しない。  もちろん天界がこんな世界になってしまったのも作者の怠慢が原因だ。奴がもっと細かく作り込んでくれれば俺はコンクリートのように固い謎の直方体から落下することもなかったし、床の固さのせいで寝付けない夜だってやってこなかったはずだ。  洋室にいる俺はなぜか手にベイプを握っている。水蒸気だけが出てくる電子煙草と思ってくれればいい。煙草と違うのは、有害物質が一切含まれていないという点だ。  ボタンを押しながら、思いっきり息を吸い込む。喉にメンソールのような爽快感を残して俺の体内に入った水蒸気たちは、そのまま雲のような塊になって勢いよく口や鼻から飛び出していく。天使に肺という器官があるのかはわからないが、どちらにせよ興味が無い。作者が俺の身体を掻っ捌いて肺がありましたなんて描写をしないことを祈るばかりだ。  なるほど、作者は最近このベイプを買ったから、使っている様子を文字に起こしてみたかったらしい。そのやる気を俺の仕事の描写に使ってほしいところだが、そう願ったところで奴がやる気を出してくれるとは思えない。  作者はこのあと俺が仕事に向かう描写を書くつもりではあるらしいが、個人的にそれがかなう可能性は限りなくゼロに近いと思っている。なぜなら奴は、「一緒にカフェ行こう」という友人の誘いに乗り、その友人が仕事の電話をしている間にこれを書いているからだ。奴の友人が「おまたせ」と声を掛けてくる前に俺は仕事を終わらせなければならない。  作者の特性としてあげられるのは、必ずしもキリのいいところで終わらせるわけではないという点だ。いくら文章の途中だろうが飽きればそのまま下書き保存するし、そこから一週間もパソコンを触らないことだってある。とにかく、はやくしごとn
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