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「曲がりなりにも私は上司よ。その上司に向かって「君」はないんじゃないかしら?」
「あなたに出会うため」
「はっ?」
「ホテルマンになったのは、あなたに出会うため」
「いい加減にしなさい」
「ちょっと待ってもらえますか?」
少し強めに注意をしたら、それ以上、強めに__なぜか中西辰弥は怒っているように見える。
なぜ?
「どうして俺の言うことが、いい加減なんですか?」
「どうしてって__そんなの決まってるじゃない。あなたが適当なこと__」
「だからどうして俺が適当なこと言ってるって、あ・な・た‼︎に分かるんですか?」
真正面からぶつけられた嫌味と皮肉に言葉が出ない。
こんなヤツにキスをしようとしてたなんて__。
「それじゃ、あなたがホテルマンになったのは、私に出会うためでいいのね?それを元に評価をするけど、本当にそれで構わないわけね?」
「はい」
これまた、怯むことなく見返してくるから腹立たしい‼︎
なんの迷いもなく返事をするあたり、相当、性格も歪んでいるだろう。
私の評価はもう決まった。
「もういいわ」
冷たく言い放った。
手首のスナップをきかせて追い払わなかっただけでも褒めて欲しい。
「でも俺、頑張ります‼︎こんな綺麗な上司と仕事できるなら、死ぬ気で頑張ります‼︎」
そう宣言して、中西辰弥は出て行った__。
それから30秒は無表情で、いや、厳しい顔でドアを睨みつけていたが、もういいだろう。もう戻ってこない?
そう判断した私は、肩の力を抜いてフッと笑った。
フフフっと。
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