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看板にはペンキ文字で栄養シチューなどともっともらしく書いてあるが、ようするに残飯シチューである。進駐軍の食い残した廃棄物を闇ルートで回収し、ドラム缶にぶち込んで塩とカレー粉を加え、ほかに食えそうなものもそうでないものもなんでもかんでも混ぜ合わせて煮込んだ酷い代物であった。どろどろして味は濃く、舌が火傷するぐらい熱かった。腐りかけた豚肉の欠片が浮いていた。所々にコンビーフのようなものも混じっていた。あわてて一気に飲み込むと、喉に鶏肉の骨が刺さってむせる羽目になる。ニンジン、ジャガイモ、チーズ、トウモロコシ、グリーンピース、マッシュルーム、スパゲッティ、ハンバーグの欠片。進駐軍の食べ残しがなんでもかんでもぶち込んである。配給だけでは腹の足しにもならぬものだから、高価でしかも違法な食い物と知りつつ、みんなこれを食いたくて食いたくて食いたくてたまらずに、行列をつくって長蛇となる。
南条は残飯シチューを瞬く間に平らげ、口のなかに残ったジャガイモの欠片をまがい物の酒で胃袋に流し込んだ。
南条の背中側の卓には一目で愚連隊と知れる男たちが陣取っていた。男たちはものも言わず争うようにして残飯シチューを食らっていた。右も左も、どこもかしこも、人、人、人で、芋で芋を洗うように溢れかえっていた。
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