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選抜された迎撃戦闘機操縦者たちは、当たり前のように決死の体当たり戦法をやらされた。だが南条は選抜されながら命令に背き、体当たりせず正攻法でB29に機銃弾を撃ち込むだけで帰還した。体当たりせずの生還を三度果たしたところ、南条は技量未熟者らと共に戦隊長の岸原少佐から鉄拳制裁を喰らい、半ば強制的に特攻隊へ志願させられた。そしてすぐさま九州へ転属となったのだった。戦隊長の岸原少佐に対する絶望と不信はそのまま軍首脳への恨みとなり、さらには国家への暗い怒りとなって激しく揺れた。
首都上空で超大型爆撃機B29の大編隊を目の当たりにし、雀蜂の大群のように飛来する新型グラマンF6F戦闘機やP51戦闘機と空戦するうちに、米国のすぐれた文明と工業力にただひたすら圧倒された。もはや大日本帝国には米国に対して万にひとつも勝ち目がないことを南条は悟っていた。南条ひとりが新型グラマンを十機撃墜しようと、十五機撃墜しようと、もはや挽回などできぬほどに戦局は悪化していたのだ。
日本は負ける。
日本は鬼畜米英に国土を踏み荒らされ、やがて亡国となる。
南条は、一般の国民が知らぬ現実を、空の上で目の当たりにしていたからこそ、絶望感で気持ちが重くなった。
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