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プロローグ
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1.幼き頃の記憶
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透き通ったやわらかな波が、小さな女の子の足もとを何度もくすぐっていた。
ザザー、という波の音に少女が怯えたのは最初だけ。
すぐに浅瀬で波と戯れ始めた。
海というものが、しょっぱいと自分の舌で知ったのは、この時だった。
跳ねたしぶきが口に入り、飲める水じゃないと、本能的に体に刻まれた。
すぐ後ろの真っ白に反射した砂浜から、祖母が一人彼女を見守っている。
少女が水面から顔をあげて、手を振れば、そのたびに祖母は笑顔でそれに答えていた。
だから、安心して一人水遊びをしていた。
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