13人が本棚に入れています
本棚に追加
/136ページ
異世界転移は波乱の幕開け
月明かりでうっすら明るい町の中。
私は必死で走っていた。
はぁはぁと弾む息、長い髪が背中でぱたぱた跳ねる。
土の上はいつものヒールの靴では走りにくくてふらふらするけれど、走らなければいけない。
なにしろうしろからは、日本刀をかざした男が追いかけてきているのだから。
「この……っ、大人しくっ、しやがれっ!」
野太い声がする。走っているので息が上がっていて、余計に恐ろしい声だ。
大人しくなどするはずがない。
私は必死に駆ける。
けれど不意にかつっとヒールが石に当たってしまった。
「きゃ……!」
走っていて勢いがついたために、私は勢いよくふらついて……。
ズシャッ!
土の地面に倒れ込んでいた。
きっと男は勝ち誇ったような顔をしただろう。
なんとか上半身を持ち上げた。振り返った。
せめて這ってでも避けようと思って。
だがそんな甘い考えは吹っ飛んだ。
私の目が見開かれる。
男がザッ、と日本刀を振り上げるのが見える。
月の光が反射して、ぎらっと恐ろしく光った。
斬られる……!
最初のコメントを投稿しよう!