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私は目を見開いた。
眩しい光が日本刀の向こう側に、パァッと弾けたのだから。
倒れ込んだときに見えた橙色の光は、夜空を明るく焼くようだった。
「ぐぁぁーっ!?」
恐ろしい悲鳴を上げて、ガシャッと重いものが落ちる音がした。
パッと飛び散った赤は、血液。
まるでスローモーションのように、夜空に弾けるのが見えた。
けれど私のものじゃ、ない。
ぼたぼたと目の前に、さっき飛び散ったのと同じ血液が滴って、私はヒッと声を洩らした。
「よぉ、あんちゃんよ。丸腰の女を試し斬りたぁ、いい趣味してんね」
からん、ころん、と下駄の音。
固まった意識と体で、なんとかそちらを見る。
血と刀と、呻き声。
この場にそぐわない、のんびりとした声を発した人物を。
すらりとした長身の彼は、まるで荷物でも担いでいるように、肩に刀の背をぽんぽんと跳ねさせて、笑顔で私の目の前にうずくまっていた男を蹴り倒した。
倒れ込んだ男はだらだらと血を流していたけれど、その血の中から、黒いものがぬるりと抜け出すようにうごめいた。
けれど私が震えるより先に、すぅ、と霧のように四散して見えなくなったのだった。
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