異世界転移は波乱の幕開け

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異世界転移は波乱の幕開け

 月明かりでうっすら明るい町の中。  私は必死で走っていた。  はぁはぁと弾む息、長い髪が背中でぱたぱた跳ねる。  土の上はいつものヒールの靴では走りにくくてふらふらするけれど、走らなければいけない。  なにしろうしろからは、日本刀をかざした男が追いかけてきているのだから。  「この……っ、大人しくっ、しやがれっ!」  野太い声がする。走っているので息が上がっていて、余計に恐ろしい声だ。  大人しくなどするはずがない。  私は必死に駆ける。  けれど不意にかつっとヒールが石に当たってしまった。 「きゃ……!」  走っていて勢いがついたために、私は勢いよくふらついて……。  ズシャッ!  土の地面に倒れ込んでいた。  きっと男は勝ち誇ったような顔をしただろう。  なんとか上半身を持ち上げた。振り返った。  せめて這ってでも避けようと思って。  だがそんな甘い考えは吹っ飛んだ。  私の目が見開かれる。  男がザッ、と日本刀を振り上げるのが見える。  月の光が反射して、ぎらっと恐ろしく光った。  斬られる……!
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