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chapter 3_2
ーーfrom A.D.2045_U.S.A-Los Angeles
眼が覚めたら知らない天井があった。辺りを見回すと、どうやらメディカルルームのようだった。
ベッドから起き上がると、メディックが声をかけてきた。曰く、今日新しく就任する仕事の訓練をしている最中に、頭を打ってここに運ばれたらしい。メディックに言われるまで自分の名前も忘れていた始末だ。よほど強く頭を打ったらしい。
局長が呼んでいるとのことだったので、オレは、メディカルルームを出て、局長室のある階に向かう。この情報局の建物に来たのは今日が初めてだったが、そんな気がしない。迷わずにエレベーターに乗れたのは運が良かったからだろうか。
目的の階に到着し、ID、網膜、指紋、声紋、歩行、静脈パターン、ナノマシン照合、様々なバイオメトリクス認証に若干のうっとおしさを感じつつ、ブルネットの髪が美しい美人の秘書に局長室に通される。名前を訊いたらアビゲイルと言うらしい。今度デートにでも誘ってみようか、そんなことを考えていると、局長が姿を現した。ひょろっと細長い手足に金縁眼鏡の奥の眼が妖しく光っていた。
なんだか蛇みたいで生理的に受け付けないな、とオレは多少の不快感を覚えた。
「君が新任のセパレーターか。先ずは名前を訊かせてもらえるかな?」
蛇男がいやらしい笑顔でオレにそう告げる。
オレは腹の底からせり上がってくる不快感を無理矢理押さえつけて背筋を伸ばし、息を吸い込んだ。
「本日付けで、情報局時間情報部のセパレーターに任命されました、エドワード・フェンダーです。どうぞ宜しくお願いします」
了
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