再会

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「優一は父さんを軽蔑しないのか?いや…してるよな。」 手を背中に当てて横にされながら、間近の優一の顔を見ながら聞いた。 「してない。正確に言えばしてた。だけど俺の知ってる父さんは母さんを大事にしてた。俺の事も愛実の事も大事にしてくれた。俺が産まれる前の事は母さんが決める事だ。被害者は母さんで当時を知らない俺がどうこう言える事じゃないと思う。母さんが許したなら…いや、許してないかもしれないけど、俺が父さんに何か言うべき事じゃないと思ってる。」 しっかりと俺の目を見て優一は話す。 「相手だって幸せにしてるんだろ?もういいんじゃないの?俺は…大事にされて愛されて育ったよ。父さんは相手の事も本気で好きで本気で応援していたんだと思う。恋愛が下手で鈍感でずるいけど…軽蔑はしない。ちゃんと反省してやり直したんだから。母さんに許されたいなら長生きしないと!ちゃんと寝て!そろそろ限界!!安静時間!いいね?」 目元を腕でグイッと拭いて、強気の目で優一に言われた。 有無を言わせない所も愛子に似てる。 クスリと笑うと、強気の声。 「何?」 「いや…愛子に似てるなって思って。」 「何処が!」 「そういう怖いとこ。」 「はぁ?あの人と一緒にしないで…「しないでくれますぅ?」 優一の声に被せる様にドアの所で声がした。 全開に開いた扉の場所に愛子が立っていた。 「何よ、優一。私に似てるって言われたら喜ぶ所でしょ?」 「冗談言わないでよ。俺は母さんみたいにお人好しじゃないし、開き直ると怖くもない!」 「ひどっ!誠一さん、何話してたの?ひどくない、この子ぉ。」 ただいまと膝を着いてベッドの横に来てくれる。 「男同士の内緒の話。」 愛子の顔を見ておかえりと笑顔を向ける。 「あら、教えてもらえないのね。残念。」 ふふっと笑い、愛子が額に手を置いた。 「熱もないし、元気そうね。私がいない方が元気なんじゃない?」 「母さん、俺にお土産は?」 「テーブルの上にたい焼き買って来た。」 「うお!やった!もらうね。」 「おやつにどうぞ。後でお父さんにも持って来て。食べ終えてからで良いから、お茶もね?」 「了解!」 優一が出て行くと愛子は着替えるね、とクローゼットに入って行く。 後ろ姿を見ながら、誠一はアレッと思った。
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