砂糖菓子を君と〜キャンディみたいな

再会

部長として初めての人事会議に出た誠一の狙いは、人事の議題の上に安藤の名前を載せる事だった。
会社のイメージアップにも良いと女性初の課長に安藤彩香を推した。

仕事の結果も残し、主任として実績もあると他の役員も同意してくれた。
誠一には恐らく最初にして最後の部長としての人事会議参加になる。

最初で最後のチャンス、名前が上がらなければ比較も出来ないし候補にもならない。
他の人が男性の名前を上げる中、誠一だけが女性の名前を上げた。
会社のイメージアップ、女性の意識向上、これに上の役員が納得をし恐らくはこれを最後に自分達にも少しは痛い覚えのある浮気という噂が流れた、で出向させられる俺に対しての同情票もあったと思う。
それほど問題がなければ優秀な人間なら今回は花を持たせよう、そんな気持ちにも後押しをされて安藤彩香の課長が決定した。

会議が終わると暫くその場に座ったまま、誠一は放心していた。

二週間前、最後に彩香の部屋に行った時、人事会議の話をした。

会社内で俺の離婚の原因が実は不倫でそれが妻にバレたからからだと、その相手が社内の人間ではないかと噂が流れた。

余りにも大きくなった噂だからいずれ上から聞き取りをされる。
離婚原因は何か、本当に不倫か、社内に相手がいるのかと。

素直に話す訳にはいかないが、嘘を塗り固めてもいずれバレる、そう判断した俺は彩香に話した。
浮気は認める、相手は社外の子だと言う、それで部署を飛ばされるだろうと。

案の定、俺の出向が決まり、事実上の左遷に彩香は腹を立てたが、俺はこれで良かったんだと思えた。
だから最後の賭けに出た。

彩香が今も俺を好きでいてくれるなら、自分達の罪を認めたなら、愛子に悪いと思うなら、課長のポストを諦めて結婚してくれるかと聞いたのだ。