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「半分頂戴。」
「いいよー。私一個と半分食べるね。」
「そこは私も半分にするねじゃないのか?」
「食べ盛りって知ってる?」
先に半分食べてから半分取るね、と言われて、愛実が食べるのを待った。
幸せそうに食べる姿を見て俺も幸せになる。
「あんなに小さかったのになぁ…大きくなるんだなぁ。この間、産まれた気がするのに。」
ポツリと言うと、半分にしたアイスとスプーンを渡される。
「その前に起きないと。」
と体を起こすと、慌てて手を貸して枕を立ててくれた。
こういう所は俺に似たんだと思う。
気は使えるが何処か抜けている。
「愛実は外見はお母さんに似てるけど中身はお父さん似だな。」
嫌かもしれないと言ってからしまった、と思うと、笑顔で言われた。
「お母さんの娘だから似てるだろうけど、お父さんの子!だから似てるのも当たり前でしょ?」
アイスをパクッと食べてへへッと笑う。
愛実の頭を撫でて、ポツリと呟く。
「優一の時、お母さんの出産に立ち合えてないから、愛実の時に立ち合えてお父さんは本当に幸せだった。愛実には感謝してる。産まれて来てくれてありがとう。」
アイスを食べる手を止めて、涙で目がウルッとした愛実は、それを手で拭いてから照れ隠しに話を始めた。
「お兄ちゃんの時は知らなかったんだよね。やっぱり立ち合いたい?」
「そりゃそうだよ。」
「でもさ、女と違って、男の人って子供が生まれる実感ないとかいうよね?それ本当に俺の子か!とかさ。」
「お前…それはテレビドラマの見過ぎ。」
呆れた顔で言うと、ヘヘッと笑い、でもそうでしょ、と付け足した。
「お兄ちゃんを初めて見て自分の子供って分かんないでしょ?それに分かっても大きくなってて急に父親ってなれるの?びっくりしたりしなかったの?」
「愛実…質問が大人になって来たなぁ。」
それにびっくりだよ、と言ってアイスを口に入れると、来年は15歳だよと頬を膨らませた。
「あの時はお母さんに好きな人が出来たと思ってたんだ。仕事先でゆうちゃんって聞いて、待ち合わせしてるならどんな人か見てみたくなって…。」
「うわっ!やばい人だ!ここにやばい人がいる!」
クスクス笑う愛実に笑顔を向けてから話を再開した。
***
キッズルームと書かれた看板の下のドアから入っていたのを見た誠一は、階段の下で出て来るのを待っていた。
出て来た愛子は前抱っこで小さな子を抱いていて、誠一を見ると顔色を変えた。
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