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あなたが幸せで嬉しいと思いました。
昔の愛情とは違い、懐かしい、妹を見るような、そんな穏やかな愛情がありました。
幸せでいて欲しい、今はただそう思います。
あなたと出会った事に後悔はありません。
僅かな時間、幸せをありがとう。 笹嶋 誠一 ーー
書いたはいいが少し躊躇する。
(これを愛子へ託す事は愛子への裏切り行為ではないか?)
最後にこんな手紙を残すべきではないかもしれないと考え、ぐしゃりと握り潰す。
愛子は良い気持ちはしないだろう、最後まで自分の夫が過去の恋人に手紙を残していたら…何処までも俺はバカだなと反省をした。
見舞いで別れは済んだ。
そう考えてゴミ箱に投げ捨てた。
(幸せなら…それでいい。)
始めて出来た恋人という訳ではなかったが、初めて結婚しようと人生を共に歩こうと思った人だった。
必死に頑張る姿を見て、それを支えてやれたらと思えた人だった。
その時の気持ちに嘘偽りはないし、後悔もない。
それは相手が愛子でもそう言える。
(愛子へあんな事をしなければ…俺達の思い出も綺麗なままでいられたのにな。)
今はそれが残念でならないと考えて誠一はノートを開いた。
ーー愛実、東王高校の制服も清麗学園の制服もどちらも似合っていたよ。頑張った先にどちらの学校があっても、愛実はしっかりと楽しい学校生活を送って下さい。ありがとう、制服姿を見せてくれて。でも入学式もお父さん、絶対側にいるからな?転ぶなよ?ーー
昼寝をして夕食に起こされ、食べ終えて戻ってからサイドボードの上に置かれたノートをパラパラ捲る。
ーー側にいるなら転びそうになったらその前に支えて下さいね。それ位できるでしょ。
(寝ている間に書いたのかな?)
赤ペン先生の無茶振りに吹いた。
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