11月、動かない中で

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あなたが幸せで嬉しいと思いました。 昔の愛情とは違い、懐かしい、妹を見るような、そんな穏やかな愛情がありました。 幸せでいて欲しい、今はただそう思います。 あなたと出会った事に後悔はありません。 僅かな時間、幸せをありがとう。        笹嶋 誠一 ーー 書いたはいいが少し躊躇する。 (これを愛子へ託す事は愛子への裏切り行為ではないか?) 最後にこんな手紙を残すべきではないかもしれないと考え、ぐしゃりと握り潰す。 愛子は良い気持ちはしないだろう、最後まで自分の夫が過去の恋人に手紙を残していたら…何処までも俺はバカだなと反省をした。 見舞いで別れは済んだ。 そう考えてゴミ箱に投げ捨てた。 (幸せなら…それでいい。) 始めて出来た恋人という訳ではなかったが、初めて結婚しようと人生を共に歩こうと思った人だった。 必死に頑張る姿を見て、それを支えてやれたらと思えた人だった。 その時の気持ちに嘘偽りはないし、後悔もない。 それは相手が愛子でもそう言える。 (愛子へあんな事をしなければ…俺達の思い出も綺麗なままでいられたのにな。) 今はそれが残念でならないと考えて誠一はノートを開いた。 ーー愛実、東王高校の制服も清麗学園の制服もどちらも似合っていたよ。頑張った先にどちらの学校があっても、愛実はしっかりと楽しい学校生活を送って下さい。ありがとう、制服姿を見せてくれて。でも入学式もお父さん、絶対側にいるからな?転ぶなよ?ーー 昼寝をして夕食に起こされ、食べ終えて戻ってからサイドボードの上に置かれたノートをパラパラ捲る。 ーー側にいるなら転びそうになったらその前に支えて下さいね。それ位できるでしょ。 (寝ている間に書いたのかな?) 赤ペン先生の無茶振りに吹いた。
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