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「たまには変わったイベントしたい……」
伊織先生がいつもの撮影途中にそんなことを言い出して、何言ってんだこの人? って思ったのは俺だけじゃないはずだ。
「伊織先生、恋煩いですか?」
にこやかにタッくんがそう聞いているがそれはない。本能で生きる伊織先生にそんなセンチメンタルな感情があるはずはない。
「私の記憶する限り、変わってないイベントってないのでは?」
五丁目さん、みんなそう思っているけど正面から口にするのね。
「伊織先生の普通は刑事罰確定の事案だしねぇ」
うたうものさんもまた容赦ない。
「ま、伊織先生が変なこと言うのいつものことだしーー」
げたんわくんもなかなか言うな。
「変わったイベントかぁ。伊織先生の言う変わったイベントってつまり普通のイベントでしょ? 感覚、一般人と真逆だからねぇ」
良くんもそう思う?
「てか、伊織先生、痔にでもなったの? そうじゃなきゃそんなこと言わないよね?」
「香多くん、きっとそれだ!」
「瑠璃……、てかみんな締めてやろうか!? 言いたい放題言いやがって! 私を変人扱いするな!」
いや。どの口が言うんだよ?てか、最近親父が母さんに付きっきりだから、伊織先生の問題児っぷりがスゴい目につく。ぶっちゃけて鬱陶しい。
「モデルの皆様、とりあえず伊織先生の案を聞きましょう。話が進まないので」
さらりと束砂さんが間に入る。その最中、アッキー&マッキーが伊織先生にお茶を飲ませている。
「皆さん、駄目ですよ。伊織先生若くないんだから」
「ちょっとアッキー!? 私は永遠の二十ニ歳よ!?」
「はいはい」
「マッキーも老人扱いしないで!?」
てか誰も伊織先生の実年齢知らないんだけど、アッキー&マッキー知ってるの? 薫蘭風ちゃんに聞いても永遠の二十ニ歳って答えるんだけど!?
「皆様、伊織先生の実年齢が気になるようですが、永遠の二十ニ歳とか言ってるあたりで察してください」
アッキーに言われて、みんな察した。
「はいはい。おばさん、で変わったイベントって?」
薫蘭風ちゃんが先を促す。
「うむ! ファンが争う水泳大会をやろうと思ってな!」
「あ、確かに普通だ」
更紗さんもさらりと呟く。
「変わったイベントだと言っているだろう! 名付けてにょた杯! 同じ推しを持つファンが水泳で争い、推し同士の頂点に立つものが推しの等身大フィギュアを手にするのだ!」
「……いつも通りですね……」
はろんさんの一言に伊織先生は涙目になる。
「そんなこと……ないもん……」
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