透明な君へ

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姉は暴君、弟は天使と近所ではもっぱら有名だった私達。 そんな弟を憎たらしく思って散々いじめ抜いた小学校時代。 でも天使、透真はそんな私を恨むでもなく いつも笑顔で許してくれた。 『最近、夢を見るんだ。』 『夢?どんな?』 『昔の夢。家族でネズミの国に行ったときの。』 あー。たしか私が小6で透真は小1だったかな。 『あのとき、僕が迷子になったせいで 姉さんは楽しみにしてたメリーゴーランドに乗れなかったんだよね。』 『え?そうなの?あんた良く覚えてるわね〜 そんな10年も前の事なんか覚えてないわ〜。』 暴君の私は、その当時透真にどんな制裁を加えたのかすら覚えてない。 『あのとき、姉さんが人混みの間から僕を迎えに来てくれたんだ。』 透真が嬉しそうに笑った。 そうだっけ? そもそも、メリーゴーランドなんかより絶叫マシンの方が好きじゃなかった? 『姉さん、ありがとう。』 『ん?』 『僕を迎えに来てくれて。』 この日の夜、透真の容態は急変して 日付けが変わる直前 私と両親が病院に到着する前に 透真は天国へと旅立った。
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