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旅立ち
今日は、少しキブンがしずんでる……
昨日の夜にマー君が手術室に運ばれたみたい。
マー君は、隣りの病室に入院している男の子で
名前は雅人『マサト』君て言うんだよ。
あたしの方がおネエちゃんだからいつも遊んであげてるんだ。
昨日からマー君は帰ってこない。
病室をみにいったら、マー君のベッドがなくなっていたの。
あたしは、ここでの生活が長いからわかる。
もしかしたら、マー君も他の子と同じように
お空にいっちゃったのかな?
かなしいな……
♢
あの日からマー君は帰ってこなかった。
かなしくてキブンが悪くて、元気がでない。
「う、う〜……」
どうして こんなときに、発作がおきるの?
頭がいたい。割れそう……
「陽子ちゃん大丈夫?せんせいの事、わかる?」
いたみの中でせんせいの声がだんだん遠くなる。
つらくて つらくて 返事ができない。
♢
ーカツカツカツ
何だろうこの音。
あたしは気がつくとまっ白な部屋にいる。
あたしは眠ってしまったのかな?
部屋を見渡していると黒いスーツをきた男の人がたっていた。
あっ。この人が歩いてた音か。
「あ、あの〜……ここはどこですか?あなたはだれ?」
「私ですか?私は貴方の世界では、『死神』と呼ばれています。貴方は、亡くなられたのでお迎えに参りました」
この人、何いってるの?
あたしは言われている状況に理解できない。
こわい!
「突然の事で、びっくりしているでしょう。貴方は出来る限りの力を尽くして病気と闘いました。私は、貴方をあの世までご案内する為に来ました」
「うそ……やだ!お、おかあさ〜ん!うう……ううぇ〜ん」
「泣いても、もう生き返る事はできません。どうしますか?このままあの世に向かうか、この世の人達へ最後の挨拶をされますか?」
「えっ?さいごにお別れできるの?」
「ええ。ただ、元々の身体には戻れません。戻れるのは、希望する人の夢の中です」
「夢のなか?夢のなかでどうするの?」
「希望する人の夢の中で貴方が伝えたい事を伝えて下さい」
「うん、言いたかったことを言えばいいんだよね?」
「はい。ただ、その人の記憶に残ってしまうので、伝える事は慎重に言葉を選んでください。では、決まりで!貴方が思い浮かべた人の夢の中にいきます」
「うん」
あたしは おかあさんのことを思い浮かべた。
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