ある男

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ある男

ーー500ねん前ーー 「これより、父より引き継ぎ アーノルド1世が指揮を執る!」 私の国はこれから戦いに向かう。 私の妻の故郷。 本国の計画は、父が指揮を執る時から綿密に練られていた。 相手国の姫『雪姫』と私が結婚をし、姫を人質に取り、制圧してしまおうという計画。 私は、小さい頃より父の背中を見てきた。 天下を執る為には、どんな手段をもとる── それが父からの教え。 私も父の考えに賛同している。 「いざとなったら姫は亡きものにしてしまえばよい」 ♢ 「本日到着し雪姫ただいま参りました。至らぬ事もあるかと存じますが宜しくお願い致します」 「おおっ!雪姫よ、よく遠くまで参った。もう私の実の娘も同然よ。血の繋がった父親と思ってくれ」 「はい。お父様、とても嬉しゅうお言葉でございます。わたくしは、こちらへ嫁いだ身、命をも旦那様の為にお使いさせて頂くお気持ちです。末永く宜しくお願い致します」 「おおっ!心強いのぉ。なんと息子には出来た嫁じゃ。2人仲良くしなさい」 「はい。ありがとうございます」 雪姫は床に正座し深々と頭を下げて挨拶をする。 名前のように色白で黒髪の綺麗なロングヘア。 着物を纏っている。 和の国の雪姫は異国より嫁いで、今日初めて私の前に現れた。穏やかに、そして静かに微笑みながら私と目が合う。 どこか、他の者とは違う空気感が漂い、私の視線を釘漬けにしてしまいそうになった。 目を見れば自ずと心のあり方がわかる。 私は、この一瞬で雪姫と心が通ずるものがある気がしていた。 「雪姫よ。今日から私の妻だ、私の為に尽くせ」 「はい。旦那様、そのおつもりでございます。この身の命さえも旦那様の意のままに」 ♢ 顔を合わせてから、あまり会う機会を作らなかった。 心が通ずるように感じてしまった私は、 あと戻りができなくなってしまいそうで 怖かった。 それは、父上の教えを反してしまう事でもあり、何となく抵抗があったからだ。 あまりに月日が経っても時間を作らなかった。 作りたいとも思わなかった…… 父上がしびれをきらし会う機会を作られてから 私も、息子としてこれから指揮を取らないといけないし、いざという時は、雪姫を駒に使う。 自分自身の気持ちに強く言い聞かせる。 何かと打ち解けていた方がやりやすい。 そう思った私は、打ち解けるよう努力する事にした。 ♢ 私達は、あれから好みの物や感覚がにていて、しっくりくる気もしている。 やはり、最初に感じた気持ちは正しかった…… 「旦那様、見て下さい。夕日がとても綺麗ですね。わたくしは夕日をみているととても幸せを感じるんです」 雪姫は、知れば知るほど おしとやかで出来る妻だった。 横で静かに微笑んで 余計な事を言う事もない。 そんな雪姫が私にとって大きな存在となろうとしていた。 「アーノルド様!失礼致します。和の国がこちらへ向かってきております」 「これより、父より引き継ぎ アーノルド1世が指揮を執る!」 こうして、我が国と和の国の戦いが始まり 結果…… 「例外はない!和の国の者を皆 処刑せよ!」
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