この世とあの世

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この世とあの世

この世には存在しない人物。 この世で亡くなった魂をあの世へ案内する者を 『死神』と言う───── この世で亡くなってしまった魂をお迎えする、 それが私にとっての罰で償い。 生前、この世で相当な罪を背負ってしまった者が『死神』という仕事につく。同僚も数人いる。 『死神』達の前世での記憶はない…… 過去に何を犯してしまったのか。 知る由もない。死者を迎え、送り届け300年と月日は経ったが 私にはいつ償いが終わるのか…… わからない。 『死神』とこの世では言われているが、 この世の人々には、私が見えるし見た目も 黒ずくめの服ではなく、スーツを着ている。 例えるなら、サラリーマン、いや、スパイ映画に出てくる殺し屋のような雰囲気を醸し出している。 普通に食事もし、基本的な生活は何も変わらない。 ただ、出来るだけこの世の人間には関わらないようにしている。 人間と関わってややこしい事態に巻き込まれても面倒くさい。 変わるといえば、車に引かれようと高層ビルから飛び降りようと 『死・ね・な・い』と言うことだけ。 ♢ ーー300年前ーー 「ど、どうして……私が、こんな役目をしないといけないんですか!?」 「ほう?お主は、前世で大きな罪を働いたからなぁ〜 はて?神の私が下した事が不服というのかしら?」 大人びた言葉使いとは違い、容姿は高校生位に見え、違和感すら感じる。 神? この小娘が……? 「うん? お前、今、小娘って思ったようだが…… 私は、どんな姿にも変えられる。お主の話易い容姿に変えておいたのだが……お気に召さなかったようだな」 心を見透かされている事にびっくりして 言葉を失った…… 神の容姿は、私が小娘と思ってしまうほど若く 人間の年齢で考えると15歳位だろうか。 体型はとても細くてスラッとしている。 このまま成長したらモデルにでもなれそうなスタイル。 私は、こういう容姿がタイプなのか……? 短いスカートから覗く細い足が広範囲に露出していて目のやり場にこまる—— それにしては、若すぎる気もするけれど。 「あ、あの世でつ、罪を償うのは駄目なんですか?」 私は緊張と戦いながら精一杯に疑問を投げかける。 神は、微笑みながら 「だから、言ったであろう?1番大きな罪なのだよ。この世の住人の最後に寄り添ってくるがよい。それがお主の罪滅ぼしだよ」 そう言って、手を振りながら霧のようにふわっと消えていった。 神に言われた仕事をこなしながら 疑問ばかりが残る。 何だろう。大きな罪って…… 1番大きな罪って私は、何をしたのだろう。 『死神』という任務についたが、 孤独な気持ちと楽になりたいという気持ちと何度も日々戦っている。 淡々とこなしているが、平常心を保つことは難しい。 この任務をこなすには心がもたない気がしている。 私にも、心があるんだな、自然に顔が笑っていた。そんな 自分自身に驚きを隠せない。 1番重い罪を犯した、 『死神』にも心があるなんて 笑える——
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