スイカ甘いか

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 点滴が終わり斉藤先生が帰っていくと部屋には誰もいない。静けさがとてつもない重さで部屋を包んでいく。  いっときおいて全てが静になった頃、俺はそっと部屋を抜け出した。村はずれのお寺の奥まで滑るように飛んでいく。木村先生の診療所は山の中に入ったとても小さな一軒家だ。この村では例外なく、ここの木村先生に最後を看取られ、その後の行き先を決められる。  木村先生は診察はしないから、体はいらない。魂だけが来れば良いのでここはいつもとても静かだ。扉を開けて中に入ると、誰もいない空間で先生だけが書類に何か書き物をしていた。 「木村先生、こんにちは、今週は行けそうかな」
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