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最低な中学時代
中学に入学し、出会った一人の女。
髪はボサボサだし、制服も皺だらけ。
風呂にすら入っていないらしく、体からは、常に酸っぱい生ゴミが腐ったような臭いがしていた。
地味なメガネに時折聞こえる奇怪な笑い声。常に周りを警戒しているようなおどおどした表情、態度と変な癖のオンパレード。
まぁ、当然のように浮いた存在だった。まるで病原菌を見るようなクラスメイト達の視線。無視が定着していた。
なぜか俺、竹島 正義(たけしま せいぎ)は、三年間この女、八条院 夢羽(はちじょういん ゆめは)の隣の席だった。席替えは、何度も何度も何度も何度も何度も何度もあったが、本当に不思議なんだけど、いつも俺と八条院はセットになっていた。
呪いのよう……。
まるで、お前がこの面倒な不潔女の世話をしろと言われているようだった。
そんな俺は、友達と呼べる存在を一人も作ることすら出来ず、今日卒業式を迎えてしまった。
「最悪な中学だったな……」
下に落ちた嘆きが、跳ね返ってきて余計鬱になった。
両親は海外生活の為、ボッチの俺はこっそりと裏門から出た。賑やかな笑い声。卒業と言うイベントに感化され、鼻をすする音が不快だったから。
「はぁ~~~~あ~~~~! くそ」
その時、誰かに声をかけられた。振り返り、更に鬱の密度が増した。
「竹島…君……」
「…………八条院」
嘘だろ、もう勘弁してくれよ。
限界……。最後の最後まで、俺に付きまとうつもりか。お前のせいで、俺の中学三年間は最悪だったんだぞ。糞みたいなバカな奴には、付き合ってるって変な噂まで流されるし、そのせいで俺まで変人扱い。常に隣にいるから、俺までクサイ臭いがするし。そんな生ゴミ臭い男に彼女なんか出来るわけねぇだろ。
ってか、頼むから風呂くらい入ってくれ!
家に風呂がないなら、銭湯の金くらい出すから。
「私ね………」
「……………」
早く解放してくれ。何をチンタラ立ち話してくれちゃってるんだよ。
「好き…な…の……」
「は? 聞こえないよ、そんな声じゃ」
「君のことが、大好きなのっ!!!」
「うわっ! な、なな、何だよ。いきなり………鼓膜痛ぇ……。いきなりそんな大声出すなよ」
「ごめんなさい……」
うん? 大好きだと。俺のことが?
ハハ………。初めて告白してくれた相手が、お前だなんて。
いい機会だ。そうだ。今までの鬱憤を込めて、はっきり言おう。
俺は、お前のことが大大大嫌いだと。お前のせいで、俺の三年間ブラックだったと。
「……あのさ、俺」
その時見た、八条院の顔。地味な黒縁メガネ越しの彼女の目。今にも涙が溢れそうだった。唇は微かに震えていた。
「き、き、きら……ぃ。気持ち、嬉しいよ。でも友達からスタートしたいと言うか、心の準備がまだ出来てないと言うか………」
何言ってんだ、俺。バカ過ぎだろ。
友達からスタート? 意味不明。あんな涙に心動かされてどうすんだ!
「じゃあ……可能性はあるってこと?」
ないないナイナイナイナイ。ゼロだよ。
「うっ、うん。じゃあ、また! 八条院は、確か八条学園だったよな。あんな県外の偏差値高いお嬢様校良く受かったな。ま、まぁ頑張ろうな。お互いさ」
逃げるように、この場を去ろうとする俺の背中に、別人のような今まで聞いたことのない力強い八条院の声が届いた。
「合格よ。今、パパの許しが出た。やっぱり、あなたしかいない」
意味が全く分からなかったが、無視して家までダッシュした。
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