吉凶

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吉凶

高校の入学初日。 キラキラ光輝く新校舎にさらに気分が高揚した。自分の席に着席し、怯えながら隣の席の住人を確認した。 「あっ、宜しく」 「…………こちらこそ。うぅ……」 隣には、八条院ではなく気の弱そうな優男が座っていた。それを見ただけで涙が出そうだった。 「大丈夫?」 「大丈夫だよ。優しいんだな、ありがとう」 少し怪訝そうな顔になったが、後でフォロー入れとけば大丈夫だろう。 無事に一日が終了した。しかし、明るい未来が見え始めた高校生活七日目、事件が起きた。その日は、隣の席の前田(友達になりかけていた)が欠席していた。 朝一の担任の挨拶。 「今日は、転校生が来るからな。まぁ、宜しくやってくれ」 相変わらず、いい加減な説明の後で教室内に転校生が入ってきた。 まるでテレビから出てきたような美少女だった。教室内がザワつく。特に男子。艶々した黒髪。ここからでも分かる良い香り。その美しさに一瞬で心を奪われた。それは、俺以外の男子生徒も同じらしく、露骨なほど彼女を狙っているのが分かった。 まぁ、別に彼らと争うつもりはない。それにあのレベルの女なら、今まで腐るほどの男にチヤホヤされており、そういうモテる女は少し苦手だった。 頬杖をついて、教師が黒板に書いた汚い字『八条院 夢羽』の文字を見た。 八条院………? ゆめ……は………。 冷や汗が額を濡らした。迷うことなく、俺の隣の席に座る女。黒板から目を離せないでいる俺の横顔をニヤニヤしながら見つめているのが、嫌と言うほど分かった。吐きそうだった。 「また、宜しくね。竹島君」 「な、な、なんで……」 あり得ない。どんなに頭をフル回転しても答えは出なかった。そんな焦りまくる俺の鼻をくすぐる落ち着く甘い匂い。 隣を見る。 「フフ……驚かせちゃったね。後で説明するから。放課後をお楽しみに~」 あの糞ダサい黒縁メガネはしていない。コンタクトにしたのか? それにあの臭いもしない。むしろ、今は良い匂い。風呂にもちゃんと入ってる? ってか、こんなに可愛かったんだ!
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