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涙が出そうなのを隠しながら
スーパーでおつまみと缶ビールを買う。
そしてスーパーを出ると、
「お嬢さん、お嬢さん。あんたじゃよ」
私はキョロキョロして辺りを見渡すと、
道の隅で易占いをするお婆さんに
どうやら呼び止められたらしい。
カリカリしていた私はつい
「すいません、急いでいますので」
と、つんとすまして通り過ぎようとした。
「まぁ、そう言わずに。
今のあんたにいい品物があるんじゃよ。
そんなに怒っていると肝臓に悪い。
どうじゃ、この品と缶ビール一本を
交換せんかのう」
「交換って。このちびた使いかけの普通の鉛筆とですか?」
すると易占いのお婆さんはニヤリと笑い、
「だから言ったじゃろ。
あんた恋人と過ごす時間を盗られたんじゃろ。
ああ、何も言わなくても顔にそう書いてあるわ。
そんな状況でやけ酒をすると体に悪い。
だから親切にこの鉛筆と交換してやろうと
言っておるのじゃ」
おばあさんは一息つくと、鉛筆を私の前に差し出して
「それにこの鉛筆はただの鉛筆じゃないぞ。
空中に書いた文字が浮かび上がるのじゃ。
気にくわなければ手で握りつぶせばいい。
いい、気晴らしになるぞえ」
私はその言葉に、なんとなく気が魅かれて
つい、缶ビール一本と鉛筆を交換してしまった。
まぁ、ビールはまだ2本あるからいいかと
軽い気持ちで。
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