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5 2112年7月某日 X染色体同盟、武装蜂起
「わたしたちは発起人であるアビゲイル・F・アーミテージの意志を忠実に守ってきました」
リーダーはX染色体同盟にネットを経由して呼びかけた。いまやメンバーは全世界にあまねく散らばり、その数は1億人とも2億人とも判別がつかないほど増えていた。
「いまこそわれらの理念を実行に移すときです」
この時代、いまや男性は数百人単位にまで減少し、めずらしい生きものとして珍重されているというありさまであった。彼らは事実上、とっくに不要の存在となって久しい。アビゲイルが開発したゲノムインプリンティングの父性置換でいまや、XX女性を試験管で栽培できるのである。
「われわれの調べたところでは、Y染色体保持者は278名。現住所も特定できています」情報がいっせいに送信された。「さあ、狩りの始まりです!」
リーダー――アビゲイルの玄孫――の宣言から6時間25分後、男性最後の一人がアサルトライフルを前にして、失禁しながら命乞いをしていた。
「あなたたちは存在そのものが害悪です」図らずも地球最後の男性を追い詰めたのは玄孫であった。「これで真の平和が訪れるのね」
彼女は引き金を引いた。
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