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「おはよう」
周り中の視線を集めながら教室に着き、仲間に声をかけると、ぽかんとされた後、笑われた。
「うっそ剣一!?うける。てかマジで女みてぇ!」
笑いの渦が教室中に満ちた時、教室に隼人が現れた。
「あっ、隼人じゃん。見ろよ、剣一がさ……」
仲間が笑いながら剣一を指差すと、隼人は目を見開いて固まった。そのまま数秒間、剣一を見ていたかと思うと、みるみるうちに顔を赤くしていき。
「ちょっとこっちに来い」
剣一の腕を掴み、ぐいっと引っ張った。
「あ、え?」
「おい、隼人。どこに行くんだ?」
仲間の笑い声を背に、隼人に引っ張られるまま走って、人気のない階段の踊り場まで来た。
「隼人?」
息を切らしながら呼びかけると、隼人はぐるりと振り向いた。そして、赤い顔のままぐっと顔を寄せてきて。
「ちょっ、待て待て。何のつも……りっ」
慌てて顔の前に手を突き出して、キスから逃れようとしたが、その手に音を立てて口付けられた。
「お前こそ、何のつもりだよ。俺を、これ以上夢中にさせるな」
「は?だって昨日、お前が俺を女顔だって言ったか、ら……っ」
今度は頬に唇を落とされ、言葉尻が上がる。
「昨日のは、悪かった。言い方が悪かった。お前が可愛すぎるからできなくて当然って言いたかった。女も、自分より可愛い相手と付き合いたくないんじゃないかって」
「え?」
「だから、こういうこと」
またキスをしようとしてくる隼人を前に、逃げようにも両手を掴まれて叶わないまま、女装計画がある意味で大成功したことを知る。
しかも、あれだけコンプレックスだったのに、隼人に可愛いと囁かれるのが少しも嫌じゃないことに気付いてしまった。
こんなつもりじゃなかったと思う反面、キスをされるのを待つように目を閉じてしまう自分がいて、これも悪くないかもと思うのだった。
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