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目が覚めると、そこは一面お花畑で
透き通るほどに綺麗な青空が広がっていた
「お迎えに参りました」
俺のすぐ後ろから、声をかけられる
振り向くと、白い着物を着た綺麗な女性が立っていた
どこか透けているようにも見える
「どういうことだ?」
女に尋ねると、女は微かに笑みを浮かべて答えた
「2021年9月3日、19時38分57秒、あなたは、交通事故でお亡くなりになられました」
女の話によると、俺は会社からの帰宅途中、後ろから突っ込んできた車に轢かれて死んだらしい
確かに、会社から家に帰った記憶はない
「あの世に行かれる前に、あなたの願いを1つだけ叶えることができます。どうされますか?」
「ま、待ってくれ、そんな急に言われても、まだ頭が追いついてないんだ!」
「では、じっくりと、お考えください。願いを叶えられるのは、1つだけです。じっくりと、じっくりと...」
女に言われ、俺は頭の中で状況を整理した
とにかく、俺は死んだ
そして、今はおそらく、三途の川とでも言われるところにいるのだろう
そして、1つだけ願いを叶えてもらえる
その後は、おそらくあの世に行くってことだろう
あの世って、どうなってるんだ?
俺は天国に行けるのか?
ここは、天国に行かせてくれってお願いした方がいいのか?
頭の中で、思考を巡らす
いや、待てよ
なんでも叶えてもらえるんだろ?
生き返らせてもらえばいいんじゃないのか?
そうだ
俺には大事な妻も娘もいる
会社でも、ようやく出世出来そうなところまできたんだ
今死ぬなんて勿体なさすぎる
これはもう、生き返るしかないだろ!
「決めたぞ! もう一度、俺を生き返られせてくれ!」
俺は女に向かって叫んだ
「――本当に、それでよろしいのですか?」
女が尋ねてくる
「ああ、俺には大事な妻も娘もいるんだ。会社でも出世間近。こんなところで死んでたまるか」
「――1つしか、叶えられませんよ? 本当に、それでよろしいのですね?」
「良いって言ってるだろ! 早くしてくれ!」
「―――かしこまりました」
女がそう言うと、次第に俺の意識が遠のいて、辺りは何も見えなくなっていった――
―――
気が付くと、俺は会社のデスクの前に座っていた
時計を確認すると、9月3日の18時40分だった
―――生き返ったんだ!!
俺はそう確信し、会社を出ようとして、立ち止まった
――待てよ
この時間、もうすぐ俺が車に轢かれる時間じゃないか
このままだとまた同じ目に遭うかもしれない
俺は妻に電話をし、腰が痛くて歩けないと伝え、車で迎えに来てもらうことにした
――数十分後
当たりを見回しながら、妻の車を待つ
今のところ、俺に突っ込んできそうな車はこない
遠くから、妻の車が走ってくるのが見える
俺は安堵し、妻の車に向かって、大きく手を振る
が、妻は気づいていないのか、止まる様子がない
頭の中で、女の声が聞こえた
「――1度しか無いと、言いましたよね?」
その瞬間
俺の体は吹っ飛んで
地面に叩きつけられた
車から降りてきた人物が言い放つ
――あなたが、悪いのよ
俺を轢き殺したのは
紛れもなく、妻だった―――
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