娘・さとみ

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娘・さとみ

「明日から期末テストだから、今日から部活ないよ」 「あら、そうなの。何時に帰ってくるの?」 「ん~、4時前には」 「分かった。あ、午後から雨みたいだから、傘、忘れないようにね」  朝、そんな会話をママとしたのを思い出しながら、改めて教室の窓越しに外を見た。やっぱり雨は降り続いている。  突然、終業のチャイムが鳴って、それで我に返った。ちっとも授業に集中できていなかった。  どうしよう…  濡れて帰ったら怒られちゃうかな。  だから言ったじゃないって言われちゃうかな…  思い返すと、私が中学に入ってから今日まで、帰り道で雨に降られたことがなかった。だから油断していたんだと思う。  静かな教室内に、道路工事でも始めたような音がガガガッと鳴り響いた。みんなが一斉に椅子を引き、帰る準備を始めたからだ。  帰ったらママに怒られて、それからテスト勉強してって考えると、普段気にも留めていないそんな音までが、私を一層苛立たせた。  一人、また一人と教室を出ていくたびに、私のやる気までが一つ、また一つと消えていくような気がして、私も急いで教室を出た。
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