母・さちえ

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母・さちえ

 掃除機のスイッチを切ったのに、掃除機が止まらない?!  そう勘違いさせるほどの大きな音をたてて、急に雨が降り出した。  私は左の二の腕をさすりながら、やっぱり降ったわね、とつぶやく。過去にここを怪我してからというもの、雨が降る日は決まってここが痛くなる。 「思った通りだわ」  私は玄関で、半ば呆れながら両腕を腰に当てた格好で傘立てを見た。  そこには、夫用の大きめの真っ黒な傘が一本、そして娘の傘が三本、しっかり残されていた。因みに娘の傘が三本もあるのは、可愛いからという理由で衝動買いしているからだ。まったく、欲しがるだけ欲しがってろくに使おうともしない。 「しょうがないわね…」  時間になったらお迎えにいこう。本当にしょうがないんだから。
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