epilogue

3/5
前へ
/168ページ
次へ
人生で記入するのに一番緊張する物だと思う。 婚姻届。 優輝がなかなか書き終わらない。 一文字一文字、慎重に書いている。慎重なのは良いんだけど、もう書き始めてから30分以上は経っているんじゃないだろうか? お習字の硬筆ぐらい丁寧に丁寧に書き終えた彼は、やっと私に記入済みの婚姻届を手渡した。 自分の部分を書き始める。 何だかすごく、感慨深い。書きながら今までの事を思い返してしまう。 高校で出会って、色んな初めてを優輝と一緒に経験した。生まれてから今日までの間に出会った中で、唯一大好きと愛してるを沢山言いたくなった人。 一番最後の欄に自分の名前を記入する。 新城の姓を書くのは、これで最後か…。 一画一画、感謝を込めて名字を書く。 私が書く箇所の記入が終わった。何だかんだ、私も結構な時間がかかったようだ。 「書けたよ」 自然と笑みが零れる。それは彼も同じであるようだ。 保証人の欄は事前に書いてもらっていた。 優輝は職場の上司に、私は志賀さんにお願いしていた。
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加