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「私、東京に上京しますわ。」
「な、ななっ?!」
瑠璃子は自力で生きていきたいと決心していた。いつも琥珀に頼ってばかりだから、自立したいと。
「そ、そんな、お嬢様!! ひ、一人で大丈夫なのですか?」
「大丈夫ですわ。きちんと家事もこなしますもの。」
「い、いえ、ですが」
「もうお手伝いしなくても結構ですのよ!!」
そう言って瑠璃子は、実家を離れ、東京で一人暮らしを始めた。
「琥珀のお節介も、無くなってみると……案外、寂しかったですわね。」
瑠璃子は棚の上の写真を見る。両親と写っている自分。
「お父様、お母様……私、一年でここまでやって来れましたのよ。」
瑠璃子の両親は、瑠璃子が幼い頃に病気で亡くなっている。本人も、あまり記憶がない。実家でいたときのことを思い出すと、大体登場するのは、渾身の「お嬢様」と叫ぶ琥珀。
「家では廃人になってたりするのかしら」
そう独り言を言い、クスッと笑った。
翌日。
「今日は残業無かったですわ!! 定時ですわ!!」
スキップ気味で家に帰る。
「帰ったら琥珀に電話しましょう!」
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