本編

5/7
前へ
/7ページ
次へ
 さっきまでうかうかしていた琥珀が、少し寂しそうに返事をした。瑠璃子はそれに気づくことなく、晩御飯を作っていた。 「出来ましたわよ!」  瑠璃子は肉じゃがとご飯と漬物二人分乗ったお盆を持って来た。 「わあ!! 美味しそう!! お嬢様……知らない間にこんなに上手に……」 「もうそれは良いですわ!! せめて食べてから褒めて!!」  瑠璃子は若干顔を真っ赤にして言う。琥珀は「ははは、そうですね」と言い、「いただきます」と手を合わせた。 「私も食べますわ。いただきます!!」  元気にそう言い、食べ始める。 「素晴らしいですね……!! こんなに美味しい料理、ご両親にも、召し上がっていただきたかった……」 「そうですわね……結構、上出来ですもの。」 「それにしても、」  琥珀は瑠璃子をまじまじと見つめる。 「? なんですの?」 「先程のいただきますと言い、相変わらず挨拶が良いですね。」 「え? それが…………なんですの?」  瑠璃子は首を傾げる。琥珀は視線を落とした。 「僕、お嬢様のご両親が病気になられて、寝込んでいるとき……よくお話を聞いていました。」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加