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この頃、瑠璃子は四歳ごろ。しかし、記憶はあまり無い。
「ご両親が、お嬢様の一番お好きなところを教えてくれました。」
「私の………一番……?」
瑠璃子は思わず箸を止める。
「瑠璃子様の一番お好きなところ。それは、挨拶が元気なところだそうです。」
「挨拶……」
「ご両親はお二人とも、病気でベッドから動けませんでした。そんな中、瑠璃子が元気にただいまとおっしゃると、それだけで嬉しくなると……。」
瑠璃子はふと昨日の帰りを思い出す。残業で夜遅くまで仕事をし、かなり疲れていた。それでも、無意識に自分は「ただいま」と言っていた。
「ご両親も亡くなって、お嬢様もいなくなり、僕───寂しかったんですよ。静かで……」
「そんなに……私の挨拶………些細なことですわ……」
「それでも、確かにご両親は満足しておられました。ご両親は最期に、お嬢様が元気ならそれで良いと。」
「………!」
瑠璃子の胸の中が、ぶわっと暖かくなったような気がした。
「嬉しい……嬉しいですわ。あまり意識もしていないことを褒められて、少し意外でしたが…………ふふ。そんなに良いなら、私、これからも挨拶しますわ!」
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