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003 気づいたら森にいたんだが身体能力の把握をしてみる
新しく名前を決めたらステータスの表示も変わった。すげーなこれ。
ステータスの確認で気づかなかったけど飯を食べていなかったんだった。既に太陽も高く昇っているし、捥いで食べるか。
高い所にあった果物を跳んでもぐ。そういえば、身体能力の確認をしないと。良かった、今思い出せて。確認する前に足の速い獣に襲われたら大変だもんな。食べ終わったらやるか。
水場を探すときに広く空けたところを見つけたからそこに行く。ここなら大丈夫だろ。
「それじゃあ跳躍力からいくか、着地が怖いけど。」
全力でやってみたんだが、結構高く跳べた。比較するのが木だけだから、正確な高さはわからないんだが。それでも何回か跳んで周りを見てみると残念ながら見える範囲で森しかなかった。だけど大きい湖みたいのがあったからそこに行けば水を手に入れられるってわかったのは嬉しい収穫だった。
後、ずっと木が邪魔して近くまでしか見れなかったけど前より遠くがはっきりと見えるようになっていた。一キロぐらい先の葉っぱも細かく見えるけどそこまでのはちょっと人として気持ち悪い。あ、もう人じゃないんだった。悲しい。
「よし!気を取り直して、走ってみるか!最初は軽めからでいいかな、今までの結果から見てみるといきなり本気はヤバそうだし。」
独りでいると独り言が多くなるんだよな。前の世界でも長いこと独り暮らしだったから変わらないんだけどな、ははっ。
そんな悲しい事実を思い出しながら、ゆっくりと走り始める。体が軽い。何処までも速く走れそうだ。結構な広さのはずなんだが、この速さだとすぐに端まで行っちゃって物足りないぐらいだ。
これの確認が出来たら次は力だな。何かを殴るのは…いくら丈夫になっても痛そうだからやめるか。
そうだな、そこら辺に落ちている石でも投げるとしよう。試しに思いっきり。現状の非情への怒りを込めるように。
結果:石がもの凄い速さで遠くに飛んでった。
これは…ちょっとどうかと思う。上とかには飛ばしてないんだよ。前に投げたんだ、途中で木にぶつかって落ちると思うだろ?だがな木を次々と貫通していったんだ。近づいて見てみると、きれいな穴になって煙がもうもうと出てたよ。摩擦がすごかったんだろうな。俺は何も見てなかった。いいな?
これを狙いもうまくつけれずに投げるのはヤバいのでコントロールも見てみることにした。どうだったかって?百発百中だよ。どんなに小さい的でもな。やったら消し飛ぶけど。銃って、要らないね。
俺ってボールとか投げるの苦手だったはずなんだけどな。やってみたら出来るようになったよ。ははははは
そうだ!どうせならアクロバットとかやってみるか!今ならできるだろ、ラノベとかでやってるのを読んで憧れてたんだよ。そうだ、やろう。俺は何だってできるんだもんな。ほら、できた。あははははは
◇◇◇
何やってんだろ。
あの後、なんかテンションが降り切れてしまった俺はアクロバットだけでなく、少年漫画とかであった必殺技とかを練習してしまった。何にも起こらなかったけど。まあ、地面が穴ぼこでいっぱいになっただけだな。これはきっと後に度々思い出して悶えるやつだろ。オデ、シッテルダ。コーユーノヲ黒歴史ッテイウダ。
記憶の奥深くにでも封印しておこう。これは世に出てはいけない代物。
丁重にあれを埋め終え、次は何を確認するか考える。速度、跳躍力、力、コントロール、五感、感覚等々はやった。
…もう十分じゃね?
正直言って後は何をやれば良いのかわからないし。獣…これは今更だが魔物と言った方がいいか。魔物が滅多に強くなければ普通に大丈夫そうだ。
身体能力の把握も…すごくなりすぎて逆にどうでもよくなってきたけどできた。
それに激しく動いたから汗かいちゃったし、喉もカラカラだ。だから少し前遠目に確認した池に行ってみようと思う。
森の中を気を避けながら走るとあっという間に大きい池に着いた。
「すっげー大きいな。」
これはすごい。透明度も高くて、中を泳いでる生き物も良く見える。魚と言わないで生き物と言ったのはそれのどれもが魔物みたいな魚だったからだ。口が三つあったり、牙が異常に発達していたり。
…やっぱり普通の生物はいないのだろうか。
それでもいいか。水を手に入れられればいいしな。
浄水器なんて材料もないから作れないので、寄生虫とか怖いが思い切って掬って飲んでみるととても美味しかった。
喉も十分に潤した俺は早速服を脱いで浅瀬に浸かった。ちょっと冷たいけど走って火照った身体にはちょうどよかった。体から汗を流していると、ふと水面に目が行った。
「あれ?顔変わってないか?」
水面が揺らいで見えづらいが明らかに変わっている。形の整った眉、目はきりっとしていて鼻筋が通っている。唇も緩く笑みを湛えており、淡く桜色のそれは色気を醸しだしていた。彫りも日本人のような感じではなく深く、何というか、かっこよくなっていた。
身体も見ていると、前の頃も身長は背が高い方で今とは変わらないがモデルのように手足が長く、すらっとしている。筋肉も程よくしなやかについていて造形美とはこういうのを言うのだろうかと思わず考えてしまった。
手足の長さとか色々変わっていたのに違和感を感じなかった。もしかしてこれは『変質した者』の効果かもしれない。
『変質した者』
その身か魂か、それとも全てが変質してもなお生きてそれに順応した者。それは巨大な力なのか世界なのか。貴方はこれからもきっと順応できる。
こう書いてあったはず。多分この称号が出たのはこの体の変化かな。魂は…考えないでおこうか。
変質して、順応したってあるからどうやって順応したのかは知らないけどそういうことなんだろうな。
ある意味身体能力の増加も頷け…ねーわ。あり得ねーよ、あんなの。普通はねぇわ、なんだ、人外だからか?
ずっと水に浸かっているのもあれなので、湖から出る。そこで気づいた。体を拭くものがない。
「どうせなら服も洗うか」
服は暫く乾かないかもしれないけど汗まみれの服をもう一度着るのは嫌だ。
魔物に襲われたとしてもこの服じゃ防御力なんて紙だからな。大丈夫だこの体なら。俺の尊厳を失うが人はいないだろうし。むしろこの服の汚れと一緒に流し落としてくれよう。
尊厳じゃ飯は食えないからな。人がいない間は喜んでそういうのは捨ててやる。
しっかりと洗って枝にかけて干して乾かしている間、果物をもいで昼食にすることにした。今度のは赤色のブドウだ。食べてみるとすごく…すっぱかった。やっぱり見た目と味があってない。吹き出さなかったが飲み込むのに苦労した。
暫くたって、気になってないとは思うけど服が乾いていないか確認してみたら何故かすでに乾いていた。…この服って乾きやすい素材で出来たりしてるのか?それとも俺のユニークスキルの力で願望が反映された…とか。あり得そうだ、この得体のしれない力なら。
俺はさっさと服を着る。そして何をするかと考えていたら
ガサッ
「ギャッ?」
「はっ?」
茂みからゴブリンが現れた。
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