時を紡ぐ

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「俺のことを思ってしてくれることは、本当にありがたいし嬉しくもある。 でも、そのせいで山吹達を危険な目に遭わせるのは嫌なんだ。 肉体的なことも精神的なことも…俺のために誰かが傷付くのは… だから『ありがとう』も言ったけど、それ以上に叱っちゃって… 俺の気持ち…上手く伝わらなかったかも。」 まるさんは俺の頭を撫でながら、ぎゅっと抱きしめてくれた。 「あの子達も…心底慎也のことが大好きなんだ。 お前が笑ってくれるなら、どんなことでも厭わずに行動に起こしてしまうんだろう。 俺だって。誰よりもそう思っている。 お前の気持ちは伝わっているはずだ。 後で俺からも話をする。 大丈夫。だから、そんなに気を病むな。」 「うん…まるさん、ありがと。」 気持ちを吐き出すだけで、心も身体もほわほわと温かくなって落ち着いてきた。 「まるさん、ありがとう。大好き。」 「ふふっ、それ以上に俺は慎也のことを思っているぞ。」 「うん、知ってる。」 くすくす、ふふっ 側から見たらバカップルのいちゃつきにしか見えないだろう。 でも、本人達は至って大真面目に愛を囁き合っているのだ。 何人たりとも、入る隙も付け入る隙もない。 俺はまるさんに強く抱かれたまま、思いを吐き出した。 「…ねぇ、まるさん…俺は、他の誰よりもまるさんが傷付くのは、嫌なんだ…」 「慎也…」 「まるさんは俺の命。ううん、それ以上なんだ。 どんなことがあっても俺が絶対に守るから、絶対に危険なことはしないで。」 「…あぁ。わかった。」 「ホントにホントだよ?」 「うむ。」 「ね、わかっ」 “もう、いい ”と、唇を塞がれた。 舌先でノックされた唇をそっと開くと、無遠慮なまるさんの舌が滑り込んでくる。 『余計なことは言うな』 『何もかもわかっているから』 まだ陽は高いというのに、無音の言葉にせっつかれるように身体を絡め、まるさんの熱に煽られてまた睦み合うのだった。
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