エピローグ

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勿忘が、慌ただしくぱたぱたと音を立てて廊下を走ってきた。 「まる様!慎也様! おばあさまからのお届け物ですよ!」 「おばあちゃんから!?今度は何だろう…」 「花江は和洋中何でもありだからな。 しかも、どれも美味い。」 「はい!今日は紅茶とくっきーです! 今日のお供えもとっても美味しそうです!」 こちらの世界に来てどのくらい経ったのか。 おばあちゃんからのお供物が届く度に、勿忘達が大騒ぎしてやってくる。 俺が来る前からずっとずっと、おばあちゃんは近所の湧き水を汲んできて、毎日綺麗な水を祠に供えてくれているそうだ。 そして時々、お菓子も添えて。 饅頭や団子、ケーキに月餅。煎餅、チョコレートにパンケーキ等々。 お陰でまるさんだけでなく、勿忘達も口が肥えてしまったらしい。 不思議なことに、お供えされたものは霊気が瞬時にこちらの世界へ転送されるんだとか。 「ふむふむ、今日はクッキーか…先日のアップルパイも美味かったな。」 少し遅れてお盆を持った山吹が、覚束ない様子でそろそろと入ってきた。 「…勿忘…丸投げなんて、ズルい…」 「あっ、ごめんごめん。」 勿忘は、少し拗ねた山吹に謝りながら、溢さないようにテーブルに置くのを手伝った。 「スノーボールだ! まるさん、これ口の中でほろっと崩れていくんだ。俺の一番好きなクッキーなんだよ。 美味しいから食べてみて! ほら、勿忘も山吹も!」 「我らもご一緒してよいのですか?」 「勿論!」 4人でまず紅茶をひと口。 「うん!いい香りだね!」 「中々に美味い。」 「はぁ…癒されますね。」 「香りが鼻に抜けていきます!」 そして、スノーボールに手を伸ばす。 かりっ、ほろっ、じゅわっ まるさんが破顔した。 「美味いっ! 慎也の言う通りだ。 一度噛んだだけで、ほろほろと口の中で溶けていく。 甘さも優しくて俺には丁度よいな。」
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