いにしえの約束

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「まだ寝ていろ…本当に肝が冷えたぞ。 痛みはどうだ?」 俺はまるさんの腕を借りながら、また横になった。 「ありがとう。もう大丈夫。ちょっとぼんやりしてるけど全然痛くないよ。 一体何だったのかな…何か思い出しそうだったのに、薄らシルエットみたいなのが見えた途端に物凄い頭痛がして… まるで何かに邪魔されてるみたいで… ねぇ、まるさん。 まるさんと俺は、何か繋がりがあったの? ぼんやり見えた、2人が寄り添うようなシルエットは…あれはひょっとして、まるさんと…俺、じゃないの?」 まるさんは、その質問には答えずにじっと俺を見つめている。 「まるさん?」 俺の右手をそっと握ったまま、まるさんは視線を逸らして呟いた。 「『邪魔されてる』か… ひととしてのをしている今のお前にとっては、過去の記憶は…私は、不要なものなのかな……」 「…まるさん?」 「あ、いや。何でもない。 もう大丈夫だと思うが、念のためにまだもう少し休んでいるといい。 お前が寝付くまで側にいるから。」 「…うん。じゃあ、そうさせてもらうね…」 俺の質問には答えてくれそうにないまるさんの態度に諦めを感じて、そっと目を閉じた。 先程の酷い頭痛は嘘のように消えている。 俺は目に浮かんだシルエットをもう一度思い出そうとしたが、それは叶わなかった。 しかし、俺の右手を包み込んでいるまるさんの両手からは温もりだけではない、そう、敢えて言葉にするのなら『愛情』とでも言うのだろうか、胸が躍るようなむず痒いような切ないような、何とも言えない感情が流れ込んでくるのを不思議な気持ちで受け止めていた。 何かある。 俺達の間には、“何か”あったんだ。 それだけは確信しながら、俺は見守られる心地良さにゆっくりと意識を手放していった。
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