いにしえの約束

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きっと俺はここに住んでいたんだ。 まるさんや勿忘さん、山吹さんと一緒に。 朧げながらに笑顔で過ごす俺達の姿が思い浮かぶ。 だから『お帰りなさい』と言われるんだ。 ぼんやりとしたシルエットは、やっぱりまるさんと俺だ。 会話も聞こえないけど、シルエットだけでわかる、あの仲睦まじい様子は普通じゃない。 どう考えても恋人…伴侶…そんな感じに見える。 俺は一体ここで何をしていたんだろう。 俺は、まるさんの…何だったんだろう… きっと、きっと…恋人?伴侶? 「…や様、慎也様…」 勿忘さんが俺の袖を遠慮がちに引っ張りながら呼んでいた。 「どうなさいましたか? まだご気分がお悪いのですか?」 「あ…ううん。もう大丈夫だよ。 運び直してくれたの? ありがとう。 世話を掛けてごめんね。」 「いいえ。とんでもございません。 支度ができました。 さあ、こちらへどうぞ。」 「うん、ありがとう。」 勿忘さんに連れられて隣の部屋に向かう。 「あれ?まるさんは?」 「すぐにお戻りになりますよ。」 「そう…… あれ?お膳が2人分しかない… 勿忘さん、山吹さんの分は?」 「私達はよいのです。」 「みんなで食べた方が美味しいよ。 遠慮しないで2人の分も持ってきて! ほら、早く!」 「でも…」 「俺がそうしたいんだ。 ね、お願い!」 破顔した勿忘さんが、鞠が弾むように部屋を飛び出していき、あっという間に山吹さんと一緒に膳を抱えて戻ってきた。 2人とも嬉しそうだ。 「ほら、そんなに離れないでもっとこっちに。 …うん、そうそう。これでいいね。」 遠慮がちに部屋の隅に行こうとする2人を制して、4つの膳を仲良く囲むように並ばせた。 「慎也、待たせたな…あぁ、お前達も一緒なんだな。」 「まる様っ、出過ぎた真似をして申し訳あ」 「よい。さぁ、いただくとするか。 慎也も腹が減ったであろう。 おかわりもたくさんあるぞ。」 まるさんが勿忘さんの言葉を途中で遮り、席についた。
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