いにしえの約束

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もう、まるさんったら何言ってんだよっ! こんな胸ぺったんでゴツゴツした身体の男の何処がかわいいというのか? 「…んぐっ…けほっ、けほっ…… はあっ……、ありがとう… 落ち着いたからもういいよ… まるさん! 言うけどさ、『かわいい』っていうのは、俺には似合わない言葉だよ! もう…言ったらわかってくれるんだ!? さ、『恥ずかしいから、かわいい、って言うのは止めて』って言ってるのに。 ねぇ、勿忘も山吹も、まるさんに何とか言って! ん?勿忘、山吹…どうして泣いてるの?」 いつの間にか勿忘は俺の右の袖の端をちょっと摘み。 山吹は反対側の袖を。 そのうちに山吹の手の甲に、ぽたりぽたりと涙が落ちてきた。 2人とも、声を上げるのを必死で我慢しているのか、ぷるぷると身体が震えている。 時折、小さくしゃくり上げていた山吹が、とうとう 「うわぁーーーーーん」 と、ついには俺に縋り付き、大声を上げて本格的に泣き出してしまった。 つられて勿忘まで泣き出した。 「やっ、山吹?一体どうしたの? 俺何かした?やらかした? ねぇ、山吹! 勿忘!しっかり者の勿忘まで、どうしちゃったんだ?」 わんわんと大声で泣く2人をどうしてよいのか訳もわからず、戸惑いながらまるさんを見ると 「お前が…2人の名前を呼んだから。 昔のように『勿忘』『山吹』と呼び捨てで。 それにと…まるで全て思い出したかのように言うから…」 まるさんまで目を潤ませて俺に近付くと、勿忘と山吹ごと抱き込んだ。 「…少しずつでもいい…そうやって思い出してくれれば…例え全てでなくても、少しでいい、俺や、お前を慕う者達のことを……」 耳元で哀しげに囁かれ、俺までも迫り上がってくる感情に潰されそうになっていた。 大切なことを…思い出せ…思い出せ… ここで過ごしていた煌めく日々のことを……
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