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“まるさん”に挨拶を済ませてから部屋着に着替え、用意された食事に舌鼓を打った。
優しい味付けのそれらは、瞬時に俺を幼い頃に引き戻していった。
空きっ腹が落ち着く頃、祖母に請われるままあっちでの生活のこと、仕事のこと、勿論親父のこと…なんかを話した。
俺の話に祖母はいちいち頷き、驚いたり笑ったり、そのくるくる変わる表情を見るのも楽しかった。
何度目かのお茶のお代わりの後、祖母は申し訳なさそうに言った。
「ごめんなさいね。
余りに久し振りで舞い上がっちゃって、あなたが疲れてるのも構わずにお喋りに付き合わせちゃって。
でも、あなたが来るのを本当に楽しみに待ってたのよ。」
「ううん。
俺達も遠過ぎるからって不義理にしてごめんね。
親父も『申し訳ない』っていつも言ってるよ。
照れ臭がって連絡しないだろうけど『ばあちゃんひとりにして』って何かにつけて心配してるんだよ。
あ、バラしたら後で俺が叱られるかも。」
「あら、あの唐変木がそんな殊勝なこと言ってるの!?
実はねあなたのお母さん、離婚した後も、時々連絡をくれたり訪ねてきてくれるのよ。」
「へぇ…母さんが?ふぅーん。そうなんだ。
…俺達、ほとんど連絡しなくてごめんね。
でも、俺ばあちゃんに会えるの本当に楽しみにして来たんだ。
3日間しか居られないけど甘えさせてね。」
「ふふっ、勿論よ!
何もない田舎だけど、せめてのんびり過ごして頂戴ね。
さ、少し横になるといいわ。」
「時差ボケはそんなに酷くないけど…じゃあちょっとだけ寝かせて。
ご飯になったら起こしてよ。」
「わかったわ。
ゆっくりお休みなさい。
後で声掛けるわね。」
「ありがと!」
カーテンを引いて少し薄暗くなった部屋は、祖母の心遣いなのかエアコンが程良く効いており、俺は布団にダイブして大きく伸びをするとタオルケットを引っ被った。
(流石に長距離は堪えるな…やっぱり怠いや…)
瞼が段々とくっ付いてくる。
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