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…あれ?…俺、もう起きちゃったのか…
ってか、ええっ!?ここ、どこ!?
目覚めた俺は、爽やかな風が吹き、色とりどりの花が咲き乱れる高原のような所に立っていた。
チュチュピチュと会話をするような小鳥の楽しそうな囀りも聞こえてくる。ということは危ない場所ではないはず。
ここ…何か滅茶苦茶懐かしい…何で!?
俺はさっき着替えた部屋着のままで。
何だ!?夢?
それにしては余りにリアルな…
しゃがんで、揺れる花の根元をそっと触った。
この感触は本物の花だ!夢じゃない!
其処此処から匂い立つ花々の香りも
頬を撫でる心地良い風も
全てを五感で感じて、幸福感で満たされる。
夢か現実かわからないけれど、恐怖や不安なマイナスの気持ちは全くと言っていいほど感じない。
寧ろ安心感というのか、穏やかで暖かくて、身体の細胞の隅々までもが喜びを伝えてくる気がする。
「…一体、どういうことなんだ?…
ここ、どこなんだろう…夢?だよな、きっと。
俺って余程疲れてたのかなぁ…」
ぐるりと周りを見渡すと、少し先に美しく煌めく湖面が見えた。
「海?いや、湖か…」
一歩踏み出そうと動き始めたその時、湖面がちゃぷちゃぷと音を立てて揺らぎ、みるみるうちに渦を巻き始めた。
何かがいる!
相変わらず恐怖心はない。
ドキドキしながらその渦を見つめていると、湖面全体に広がったそれは、中に引っ張られるように、ぐっ、と一瞬凹んだ。
(あっ)
ざぁぁぁぁーーーーーっっっ
物凄い音を立てて、何かが巨大な水柱となって一直線に空へ舞い上がった。
俺は瞬きするのも忘れて、その動きを目で追った。
離れた所にいるというのに、粒子となった水は霧雨のように俺の身体を柔らかく濡らしていく。
太陽の光を浴びて、キラキラ光る水飛沫と共に上空に現れたのは………
「…まるさん?…」
何の確証もないのに、思わず口に出た。
金色の鱗を煌めかせ、幼い日に見たあの美しい金龍が空から俺をじっと見つめていた。
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