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まるさん!?
どうしてまるさんが!?
何で俺がこんな所に!?
疑問符だけが頭に渦巻いている。
ふっ、と“まるさん”の口角が上がったように見えた。
と次の瞬間
ごおぉぉぉっっっっっ
という音を立てて、金の柱が俺を目掛けて急降下してきた。
「うわぁぁーーーっ」
思わず耳を塞ぎ目を瞑って蹲った俺は、強風と轟音に吹き飛ばされるのを覚悟したが……
あれ?何も起こらない………
不思議に思いながらそっと目を開けると、黄金色の美しい髪を靡かせた美丈夫のドアップと、その視線に打つかった。
「うわぁっ」
思わず声を上げて後退りして距離を取った。
誰だ、誰なんだ!?
でもこの瞳は、どこかで見たことがある。
優しくて懐かしくて、愛おしい……
記憶を手繰り寄せて思い出そうとしている俺に、彼は少し拗ねたような口ぶりで言った。
「慎也、随分なご挨拶だな。
仮にもお前の伴侶が迎えにきてやったというのに。
まぁ、この姿で会うのは久し振りだから仕方がないか…」
その声音を聞いた途端に、何故か安心して身体中の力が抜け落ち、その場にへたり込んだ。
そして、動揺しつつ目をパチパチしながらも問い返した。
「やっぱり、あなたは“まるさん”!?
どうして俺の名前を?
えっ!?伴侶?
伴侶って…どういうこと?」
「はぁ…やっと俺を認めたか…
そうだ。俺はお前達が“まるさん”と呼んでいる土地神だ。
たわけ者が。愛おしい伴侶の名前を誰が忘れるものか。
やはり……お前は俺との約束を覚えていないのだな…まだ解けていないのか…」
最後の台詞はとても悲しげで。
目元は今にも零れ落ちそうな涙が滲んでいる。
ううっ、かわいいっ!
ギュッってハグしたいっ!
うえっ!?俺、何考えてんの!?
相手は“神様”!土地神様だぞ!?
伸ばし掛けた手を慌ててぐぐっ、と引っ込めた。
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