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「まるさん、怒鳴ってごめんね。
お仕事お疲れ様。
まるさんのお仕事に口出ししちゃってごめんなさい。
みんなが無事で解決したんならそれでいいんだ。」
抱きしめて頭をぽんぽんしてあげる。
ついでに、頬にちゅっ、と口付けをひとつ。
それでやっと機嫌が治ったのか、まるさんがぽそりと呟いた。
「…アイツらが…」
「ん?アイツら?」
「川の主の大鯰が…
『慎也様はご一緒ではないのですか?
あぁ、お会いしとうございましたのに…この川は我が一族が命をかけてお守り致す故、ご心配無用とお伝え下され。
そしてぜひお顔をお見せ下さいませ、とも。』
なんて言いやがる。
鯰だけじゃない。
山にいる眷属全てが『慎也様』『お会いしとうございます』等と、軽々しく慎也の名前を口に出すのだ。
…慎也は俺のものなのに。」
えーっと……大鯰さん達が、俺に会いたいと、俺の名前を呼んだだけで…
んー…まるさん、それって、それって…
「…まるさん、ひょっとして、ひょっとしてだけど。
ヤキモチ…焼いてくれた?」
「………」
ふっ、ふふっ…あはっ、ははっ、ははっ
「慎也っ、何笑ってるんだ!?
俺は、俺は真剣なんだぞ!?」
「くっくっ…ふっ…ごめん、ごめん。
ごめんなさい。
でも、でも…まるさんが、まるさんが…ふふっ…」
まるさんは、ヤキモチがバレて笑われたのが余程悔しかったのか、おれの顔を見ようとはしない。
口をへの字に曲げて、明後日の方向を向いて黙り込んでしまった。
自分の眷属達にヤキモチを焼くなんて、まるさん、何てかわいいんだろう!
そういえば、勿忘と山吹に再会した時も、そうだったよな…
誰かに慕われるのは純粋に嬉しい。
嫌われるより余程いい。
でも、それは恋愛感情とは違うものだ。
俺が心も身体も全て委ねるのは、たったひとりだけ。
俺は抱きしめる腕に力を込めた。
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