1 カプト様が落ちていた。

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1-3 カッツェ王国とワールド・トラベル出版  そんなこんなでやって来ましたカッツェ王国王都カッツェ。  魔女様の紹介には国名と社名しか書いてなかったから、僕はとりあえず王都に向かった。ワールド・トラベル出版は大きな会社みたいだし。  王都カッツェはラタラタの町からバスで2日。村から出て最初の町のラタラタで珍しいものを食べよう! と思っていたけれど、村から3時間程度の場所では村の食事と何も変わらなかった。少し残念。  それでバスに乗って国を渡れば途中の場所で珍しいものが食べられるんじゃないかと思ったんだけれど、餞別のお金でなんとか買えた切符は一番安い切符。赤くて古くて小さい10人乗りくらいのバスの硬い座席に乗り込む。  バスは大きな街は長時間留まることもなく、小さな街で時折停車し休憩を挟む。大きな街では停車料金とかバスの保管料金が結構かかるらしくてお客さんが出入りする一時停車のみ、長時間停車するのは僕の村と同じくらいの大きさの村ばかり。だから食べるものは僕の村と大して代わり映えはなかった。  探検して面白いものを探そうと思っても、停車時間はあんまり長くなくてすぐ出発しちゃうからままならない。  寝る場所も車内。夜中に面白いものを探しに行くこともできない。あれ? 僕は冒険がしたいのか?  運転手さんもカッツェにつく頃には回復薬を飲みながら到着時刻がとかぶつぶつ言いながら、死にそうな感じで運転していたから無理をいえない。というか到着時刻が遅れそうなのは僕のせいだし。そんなわけで結局代わり映えのしない食生活を送ってつまらなかった。  けれどもそんな短い弾丸ツアーでも僕の評判は地に落ちていた。周りのヒソヒソとしたささやき声と視線が痛い。 「お主は正気ではない。何かの呪いにでもかかっておるのではないか」 「それ、村でも言われたけど教会で調べても呪われてないみたいだったよ。それに見たことがないものは食べたくなるでしょう?」 「それにしても昨日道に生えていたキノコはいくらなんでも毒物にしか見えぬだろう? 何故あんな泡だったものを食べて平気なのだ」 「なんかシュワシュワしてて美味しそう、でもないけど万一美味しいかもしれないじゃない?」 「断じてない」
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