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昨日の停車場で僕は始めてみたキノコに興奮した。それで思わず食べてちょっと気持ち悪くなった。というかグエェとかいう変な音がしてちょっと吐いた。
うん、あれはなんて言うか、蒸し暑い日に洗い場の床に放置された雑巾みたいな匂いがして、齧るとじゅくじゅくふやけた分厚いガーゼみたいな噛み心地で、その隙間から濃縮された排水が口の中に溢れ出ると言うか……。まあ匂いから想像できる味だったけど、これまで食べた中ではそこまでヤバいものでもなくて。調子悪くなった原因は毒とかじゃなくて、匂いが気持ち悪かっただけのような気もするし。
「お客さん、大丈夫ですか……って何を持ってるんですか!」
「いえ、ちょっと、食べてみようかと……」
「これを食べる!?!? 一体何を言っているんです?」
調子が悪そうな僕と僕の手にしていたキノコを見て運転手が真っ青になって、キノコのあまりの形状に子どもが悲鳴を上げた。
僕は大丈夫だと言ったけど、念の為ということで予定にない場所なのに大事を取って休もうといわれた。本当に大丈夫なのに。
そんなアクシデントがあったせいかわからないけど、僕とカプト様との関係がちょっとよくなっていた。
「すみません。僕は毒物を食べないと生きていけない呪いにかかってるんです……」
「そんな馬鹿な?」
カプト様の言う通りよくわからない言い訳をして、極度に耐性の高いステータスカードを見せたら一応納得してくれた。呪いはステータスカードに表示されないから。キノコを食べたことについてはは大丈夫になったけど、呪いと言ってしまったから、なんだか腫れ物扱いが続いている。感染ったりしないのに。
そしてそれはそれとして、僕があまりに物を知らないことが判明した。
そうだよね、僕はバスに何度か乗ったことあるけどそれって父さんと一緒だったし父さんがチケットを買ってくれていたから。
だから最初、チケットの買い方すらよくわからなくてさ、カプト様に色々教えて頂いた。様をつけるととても喜ばれた。
カプト様には本当に頭が上がらない。もしカプト様をあの時食べてしまっていれば詰んでいたかもしれない……。
なんだか睨まれた気がする。ごめんなさい。
それでたどり着いた王都カッツェはなんかもう凄かった。
何ていうのか、これまで僕が見たことがある場所とあまりに違っていた。
めっちゃ高いとんがったビルとか見たこともない機械の乗り物とか。空も小竜車とか飛んでいる。僕の村だとあんなに広がっていた空がごちゃごちゃと色々なもので切り取られている。
同じ魔女様の支配領域でもだいぶん違うんだな、と固まっていても仕方がない。
「何を呆けておる。行くぞ?」
「カプト様は驚かないのですか?」
「フン、この程度ではもはや驚かぬ。世にはこことは比肩するのも馬鹿馬鹿しいほどの場所が多くある。雲よりさらに高い建物や反対に雲の奥から伸びてくる建物だ」
「それ、どうやって建ってるんです?」
「わしの専門は建築ではない。それよりとっとと用事を済ませるべきであろう」
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